【スピーチ】 デボラ・ロス-グレイマン
私は、「シビル・カレッジ」(勇気ある市民)の生きた証です。でも、それは私自身の行動によるものではなく、私がいまここに存在するのは、第2次世界大戦中、リトアニアで外交官をしていた一人の日本人、杉原千畝の勇気ある行動の証だと言うことです。彼が日本政府の訓令に背いて通過ビザを発行し、その当時ヨーロッパで迫害されていた6,000人以上のユダヤ人難民を救い、彼の傑出した市民の勇気と慈悲を行動で示してくれました。
私の母、Nechama Ramm (ネカマ・ラム)は、この通過ビザを受領した一人です。1941年、母はシベリア鉄道に乗って、ロシアからウラジオストクまで行き、そこから日本行きの船に乗りました。日本までの道のりの途中、多くの困難・障害にあい、日本までたどり着くのは無理かと思うこともありましたが、どうにか神戸に到着することができました。母は、他の難民とともに神戸に6ヶ月滞在し、真珠湾攻撃の起こる直前に上海に送られ、そこでホロコーストを生き延びることができました。
この一連の出来事は、私にとってとても重要なことなのです。私は、日々自分に与えられた全てに感謝して生きています。去年、私は夫と共に日本に行き、杉原千畝のお孫さん、杉原まどかさんにお会いしました。彼女に会った時、祖父である千畝さんの行動に、心から感謝の言葉を伝えました。千畝さんの行動が私の母の命を救い、その縁で、私はこうして生命を授かることができたからです。今日この場には、私のように市民の勇気ある行動によって命を救われた方たちがいると思います。いらっしゃいましたら、私と共にご起立願います。ありがとうございます。ご着席下さい。このように、一人の人間が世界を変えていけるのです。
ラウル・ワレンバーグや杉原千畝の行動は、私達人類が暗闇から光を生み、悪の根源から希望と人間の生命に厳然と存在する高潔な善良の心、そして崇高な倫理観、更には深淵で不変の生命を持っている証である、と認めざるを得ません。
本日、こうして勇気ある二人に敬意を払うと共に、他の人々の命を救うために立ち上がった、歴史上の全ての人々に尊敬と敬意の念を表します。彼らの勇気ある行動は、本日ここに集まった私達も、彼らと同じような道を歩むことができるのだと、その道を照らしてくれています。今なお抑圧や迫害に直面し、苦悩や困難を強いられている人々すべてのために、私達が今後、少しでも慈悲を抱いた一歩を踏み出せるように。そして、私達も勇敢でいられますようにと、心から祈らずにはいられません。
私達はなぜ今日ここに集まったのでしょうか?
TRANSLATED BY OHIRA NAKAMURA AND YUYA UCHIDA